black box

2020/1/22

おすすめ本

BlackBoxを読みました

伊藤詩織さんのBlackBoxを読みました。
検事からこれは密室の事件であり「ブラックボックス」だ、と言われたそうです。
しかし、警察の捜査や司法こそが「ブラックボックス」であった、ということが、読み終えてよくわかりました。

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本題に入る前に「フラッシュバックやPTSDを懸念される方は、どうぞ体調を優先して」という一文があります。
確かに、伊藤さんに近い経験をされた方が読むにはとても辛い内容だと思いました。
私はこの本を読みながら、自分の身に実際におきた痴漢や露出狂、ストーカーなどの性被害について振り返り、感情を思い出し、あの時どうすれば良かったのかと改めて考えました。
その時々の恐怖や怒り、全て覚えています。場所も、一瞬見た犯人の顔や年齢、特徴も。
おそらく大半の女性の読者がそう思いながら読まれたのではないでしょうか。

被害にあったらどうすればいいのか

実際にレイプ被害にあった場合に、具体的にどうすればいいのでしょうか。
精神的に大きなダメージを受けて、まともな判断ができる状況ではない上に、なかなか人に相談できない事由です。
伊藤さんの経験より知ることがいくつかありました。

  • 開業医の婦人科にはモーニングアフターピルはあるが、レイプキットは置いていない。レイプとデートレイプドラッグ(睡眠薬などを飲み物やアルコールに混入させられ、意識がない状態で性犯罪の被害にあう)の両方を検査する場合は、救急外来に行くこと。
  • 伊藤さんはどうすれば良いかわからず性暴力被害者支援のNPOに電話をしたが、対面でないと相談に乗ってもらえないと言われた。
  • 警察には、直後の精液採取やDNA検査が必要なため、できるだけ早く相談する。伊藤さんは警察に行ったのが1週間後だったため「よくある話だし難しい」と言われるが、たまたま洗っていなかった下着が見つかり、相手のDNAが採取された。
  • 弁護士に無料で相談できる「法テラス」という窓口がある。

これらを世の女性があらかじめ知っておくことで、被害を受けた時に自分の気持ちに蓋をしてしまうことなく、何らかの行動に移せるのではないかと思いました。

被害後の精神状態

事件後、何事もなかったかのように相手から電話があり、とっさに事務的に応答してしまったこと、またメールでのやりとりをされたことが書かれていました。
相手方を擁護する人々は、それを伊藤さんが被害とも何とも思っていなかった証拠のように囃し立てているようですが、私は伊藤さんの混乱した心境を理解できます。
「自分さえ忘れてしまえば、悪い夢だと思えば、元通りの生活に戻る。苦しさと向き合うよりその方がいいのでは。」

ストックホルムの調査では、被害者の70%が被害に合っている最中に体が動かない、拒否できない、解離状態などになるそうです。

誰か周りの大人に相談を

人口10万人あたりの各国のレイプ事件件数は、1位がスウェーデン(58.5件)、日本は87位(1.1件)だそうです。性被害のニュースをよく見かけるインドは68位(2.6件)とこちらも低い数値です。
これが本来の件数なのか、単に申告が少ないから事件化されていないだけなのか、考えさせられます。

実際、私も痴漢や露出狂などの性被害を警察に申告したことはありません。
私よりもっとひどい被害を打ち明けてくれた友人が何人かいました。
当時は私も未成年だったので、一緒に警察に行こうとは言えませんでした。
ですが、一度、担任の先生に相談したことがあります。先生はとても驚いて友人を労わり、悲しい顔をしていました。
急遽、学年集会が開かれて生徒たちに注意喚起がありましたが、警察に話が伝わったかどうかはわかりませんでした。

いずれの被害も親に打ち明けたことはありません。心配をかけたくないし、どう話せばいいのかわからなかった。
子どもではなく女性として見られる存在になった自分自身にも、羞恥心を持ってしまった。
友人たちもきっとそうでしょう。

でも親になってわかるのは、子供の悲しみを知ることより、知らずに一人で苦しませていることの方が不幸なのです。
伊藤さんのご両親の心情も、痛いほどわかります。
告白されて「(実際に脅迫や行動をするという意図ではなく)殺したい」って口走ってしまうの、親として普通の感覚じゃないでしょうか?
子どもたちには、もしそういう人に会ったらどんな些細なことでもすぐ相談するように、相手が変態でおかしいんやから、あなたは何にも悪くないんやから、と言い聞かせています。

成人してからもいくつか遭遇しましたが、仕事から帰る際に特定の人につきまとわれた時期がありました。
それは母に相談し、駅まで迎えに来てもらうようになると、すぐ止みました。
私はすでに大人でしたが、大人でも一人で解決することは難しかったです。

数年前に聞いた話で非常にショックを受けたのですが、知人のお子さんが性的被害に合い、すぐ親に告白してくれたため、犯人は捕まったそうです。示談を持ちかけられたそうですが、断固拒否したと。当たり前ですよね。
こんな恐怖が身近にあるということが、ただただ恐ろしいです。

ジャーナリストとして

伊藤さんはこの書籍の中で、他の国内のレイプ事件や、外国の状況なども取材されています。
経験談に留まらず、警察の体制や司法の問題点を掘り起こし、ご自身の事件も客観的に考察されているところがすごいです。
読み応えがある、というと語弊があるかもしれないけれど、ぐいぐい引き込まれてしまいました。

捜査の経緯に並行して、ご自身のキャリアも垣間見られます。
フリーランスとして世界にチャンスを求めておられる行動力は、とても真似できないものだと思いました。

民事裁判の記者会見を見て

本を読むきっかけになったのが、先日判決があった民事裁判後の記者会見です。
伊藤さんも、相手方の会見も両方全て見ました。

敗訴した男性は、質問した女性記者に対して、明らかに大柄な態度で上っ面の回答をするのみでした。根本的な女性に対する意識を垣間見たような気がします。
同席していたブレーンの女性は、取材した他の性的被害者の女性を代弁するような形で号泣していました。
なぜ同じような目にあった女性を叩けるのか、理解できませんでした。

逮捕が延期され、政府との関連性が疑われたことで、本来の問題とは違うところで暴走しているようで怖いです。
こんな単なる読書感想ブログも本当は書かない方がいいのかもしれない。
後々消すかもしれません。

「よくある話」だから黙らない

最初に警察に言われた「よくある話で逮捕は難しい」ということは、根本的におかしいと思います。
どうせ逮捕にならないだろうから、警察には訴えない、というのもおかしい。
「よくある話」がなんで「よくある」のか?
なんで「よくある」のに、もっと問題にならないのか?
必ず声にして訴えれば、声は大きくなると思う。だってこんなに「よくある」のだから。

もうオバさんになって、変な人に声かけられないし楽チンやなーと思っていたけれど、そういう問題でもないのかもしれません。

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